うつ治療で使われる5タイプの薬についての基礎知識

この薬はどんな薬?うつや不安症で処方される薬を知っておこう!

うつ症状や不安症で、心療内科にかかると、ほぼ間違いなく薬が処方されます。

 

これらの薬には、どんな種類があって、どんな働きがあるのでしょうか?「これから服用を始める」という前に、薬のことを、よく知っておきましょう。

 

【うつ症状で処方される薬の種類】

 

抗うつ剤⇒セロトニンの再取り込みを防止して、脳内のセロトニンを増やす薬

 

うつ症状の方のほとんどが、脳から分泌されるセロトニンとノルアドレナリンが、大幅に減少しています。セロトニンやノルアドレナリンは、心を安定させる重要な神経伝達物質です。

 

この神経伝達物質は、神経細胞の表面にある、「シナプス」という受容体に、くっつくことで、情報を伝達しています。セロトニンなどの神経伝達物質は、使わないで余ると、また、もとの神経細胞に取りこまれていきます。これを、再取り込みといいます。

 

セロトニンの量が、著しく減少しているうつ症状の方の場合、余っているわけではなくても、セロトニンが再取り込みされます。すると、体内のセロトニンの量が、さらに減少し、気分がすぐれない状態が続いてしまうわけです。

 

抗鬱剤は、このセロトニンを、神経細胞に再取り込みさせない働きをする薬です。再取り込みが阻害されると、体内のセロトニンの濃度が増加し、心が安定しやすくなります。

 

この効果が出るまでには、それなりの時間がかかります。抗うつ剤を飲み始めて、効果が出るまでに、2週間〜1か月、様子を見るのがほとんどです。

 

セロトニンについて詳しく解説しています。こちらも合わせてご覧ください。

 

このような働きをする、抗うつ剤は、5種類の系統があり、どのタイプの抗うつ剤が効くのかは、試してみないとわかりません。どのタイプの薬を試すのか、医師とよく相談をして、選択する必要があります。

 


知っておきたい!抗うつ薬の副作用とは?

個人差がありますが、抗うつ剤は、効果が出る前に、副作用が出ることがあります。

 

主な副作用は、胃や腸などの消化器官に出ることが多く、吐き気や食欲不振、便秘や下痢などが起こる場合もあります。

 

医師によっては、胃腸関係への副作用を見越して、胃薬を同時に処方してくれることもありますので、心配な方は、医師に依頼しておきましょう。

 

抗うつ剤の効果が出るまでには、それなりに時間がかかります。副作用の症状が、あまりに長く続く場合には、速やかに医師に連絡をして、相談するようにしましょう。

 

気分安定薬⇒抗うつ剤と併用することが多い、気持ちの波を落ち着かせる薬

 

うつ症状の処方では、抗うつ剤をメインとしながら、補助薬として、さまざまな薬が同時処方されることがあります。「異常に気持ちが高ぶる」、「興奮状態がおさまらない」など、興奮状態がある症状に、処方されます。躁と鬱の状態がある、「躁鬱(そううつ)」症状の方に処方される薬です。

 

○気分安定薬の代表例
リーマスなど(炭酸リチウム)、デパケンなど(バルプロ酸ナトリウム)、ラミクタール(ラモトリギン)

抗不安薬⇒不安感が強いときに処方される薬

 

「不安感が強い」症状のときに処方されるのが、抗不安薬です。うつ病を発症した初期段階に、まず処方されることも多く、強い不安感を抑える働きがあります。

 

比較的、服用してすぐに効果が出るため、ついつい依存してしまいがちになるので、依存症に注意が必要です。

 

症状が緩和したら、少しずつ減らすように、していきましょう。抗うつ剤での治療を始めた後でも、突発的な不安感に対処するためにも処方されます。

 

○抗不安薬の代表例
デパスなど(エチゾラム)、レキソタン(ブロマゼパム)、メイラックス(ロフラゼブ酸エチル)など。

 

抗精神病薬⇒興奮状態が強すぎるときや幻覚・妄想があるときに使う薬

 

「神経遮断薬」とも呼ばれる薬で、ドーパミンの働きを抑制する薬です。興奮状態が強いときや、幻覚や妄想がある場合に、処方されます。抗精神病薬は、手がふるえたり、落ち着きがなくなるなどの副作用が出る場合がありますので、医師と症状をよく相談しながら服用しましょう。

 

○抗不安薬の代表例
リスパダール、セロクエル、エビリファイ、ヒルナミンなど。

 

睡眠薬⇒寝つけない、眠れないを改善する薬

 

うつ症状の方の多くが、睡眠障害を抱えています。夜、なかなか寝付けない。眠れない。眠りが浅い。このような症状が出ている場合、睡眠薬も同時に処方されます。睡眠薬は、効果の持続する時間の長さが違う、4タイプの薬があります。

 

・超短時間型…2〜4時間
・短時間型…6〜10時間
・中間型…20〜30時間
・長時間型…50〜100時間

 

超短時間型や短時間型の場合、翌朝には、成分の血中濃度が下がっているので、昼間にまで眠気が出ることは、ほとんどありません。睡眠障害のタイプによって、医師と相談して、どのタイプの睡眠薬を服用するか、相談しましょう。

 

寝つきが悪いタイプなら、「超短時間型」や「短時間型」。中途覚醒してしまうタイプなら、「中間型」が多く処方されます。

 

 

 


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